今回はちょっと特別なご依頼で、
書を飾る用の額を2つ塗ってます。
直径50cmくらいかな。材は焼杉。
普段ミリ単位のものを作ってる私からしたらかなりの大物。
その額の塗りの1回目が昨日終わりました!
朱の方は漆が途中で尽きて全面は塗れなかったのでまた次回。
ご依頼は黒と朱色各1つずつなのでそれぞれ塗る。
こうやって並べると色全然違いますね!
木材ってスポンジみたいになってるので、
1回目は漆が木に吸われて表面から無くなることもある。
今回の額達はというと、
案の定かなり漆を吸いこんでいきました…!恐るべし!
『このままじゃ漆が残らない!』ので
灯油や樟脳で希釈して対策を施しながら進めることに。
それに粘り気の強い漆だと、刷毛が引っ張れないのもある。
あと漆を塗る時、利き手と逆の手で器物を持ち上げながら塗るのですが
この子大物なので長時間私が持っていられない(苦笑)
そういう点でもこの額の場合はいつも以上に
漆の調節がポイントになりそうです。
まぁ、いい筋トレだと思ってやると意外と楽しいです(笑)
それより、この額のご依頼を受けた経緯が私はちょっと面白いと思ってて。
昨年末に恩師のやっているDJイベントを見にクラブへ行ったことがキッカケなんです。
その頃は、今思うと人生のどん底だったと思います。
その状況で私ができることって漆しか残ってないし。
でも、漆で稼げるのか?
いやそんなこと言ってる場合じゃないし、
それしかできないなら、それで稼ぐならと迷った末に出した答えが
開き直ってかるーく「漆作家でーす」って腹括って言い切ることだった。
重く考えるからダメなんだ!チャラく言ってみよう!と(笑)
そしたらその次の日にこの額のお話が来ました。
運命か!と思ったと同時に
伝統工芸とクラブって全然相容れないと思ってたけど意外と言ってみるもんだなと。
だってピンポイントで「漆を塗りたいものがある方」に出会えるなんて
現代社会においてなかなか無いことなので…!
ご依頼していただいたSさんには本当に感謝です。
そんなこんなで、漆を吸わなくなるまで
この額は塗り重ねていきます!
いっそクラブで会える漆作家にでもなってみようかしら?(笑)