「金継ぎ」と「簡易金継ぎ」について



当サイトをご覧いただきありがとうございます。
annonデザイナー、タジマミカです。
久しぶりのブログ投稿となってしまいました。

相変わらず金継ぎや作品づくりの日々を過ごしております。
今手がけているもの中から途中経過を少しお見せいたします。

ご依頼品の磁器のお茶碗。金粉を蒔くまではあと少し。
私物。ベトナム好きなのでヴィンテージ・ソンべを金継ぎしたくてあえて欠けの大きいものを購入。333storeにて



さて、最近「金継ぎ」がメディアに取り上げられる機会が増えたからか
金継ぎに関するお問い合わせが増えております。
壊れたものを直して使うことは、サスティナブルな選択肢に当たるため
海外でも”Kintsugi”として、注目を浴びているようです。
(実際、海外在住の方からときおりご質問もいただくこともございます)

そんな中、今回のタイトル『「金継ぎ」と「簡易金継ぎ」について』をブログに書くべきか否か悩み続けておりましたが、わたくし個人の考えを残しておきたくて、筆を取りました。
先にお断りいたしますが、この記事ではどちらか一方に優劣をつけるつもりはありません。
しかし、わたくしの主観による判断も含まれること、どうかご容赦くださいませ。

わたしが考える「金継ぎ」の定義とメリット/デメリット

まず、Wikipediaで金継ぎがどう書かれているかを改めて読んでみました。

金継ぎ(きんつぎ)は、割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分をによって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法である。金繕い(きんつくろい)とも言う。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%B6%99%E3%81%8E

同ページで金継ぎの歴史に関して抜粋すると

室町時代以降、蒔絵など漆を使う工芸技術と、修理した器もありのまま受け入れる茶道精神の普及により、金継ぎに芸術的な価値が見いだされるようになった。本阿弥光悦作の赤楽茶碗(銘「雪峰」)のように、文化財に指定されたり、骨董として珍重されたりする金継ぎ陶磁器もある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E7%B6%99%E3%81%8E

と、書かれています。
特に

割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分をによって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法

この一言に全てが集約されていて、私が考える本来の金継ぎもこの文章と同じです。
ざっくり言うと「”天然の漆”を使っているか否か」が判断基準だと思っています。

天然の漆を使った金継ぎの特徴は4点。
・万が一口に入っても安全(原材料は漆、木粉、砥の粉、水、米糊、小麦粉、純金)
・天然の漆を用いるため、作業の際かぶれる可能性がある(あくまで硬化前の漆に触れた場合)
・漆の硬化の性質上、完成までに時間を要する
・天然の漆は高価であるのもあり、高価であることは否めない。

こちらが挙げられます。

「簡易金継ぎ」についてとメリット/デメリット

関連して、昨今よくあるのは「簡易金継ぎ」です。
内容は、合成樹脂塗料や造形用のパテを使ったもので、名前の通り簡易的な金継ぎを指します。

元々の金継ぎとの大きな違いは3点。
・天然の漆を使わない
・天然の漆を使わないため、かぶれず、完成までの時間が短い
・比較的安価で仕上がる

が挙げられます。

わたしの主観とannonとしての結論

「金継ぎ」と「簡易金継ぎ」の大まかな違いを書きましたが、ここからはわたくしの主観です。
先に結論を申し上げますと、annonでは「天然の漆を用いた金継ぎ」のみをご提供します。
それは今現在、そしてこれからもその考えは変わりません。

理由を簡潔に述べると以下4つになります。
・成分がよくわからない合成塗料は、万が一口に入ってしまった際に安全性が担保できない
・金継ぎ/簡易金継ぎそれぞれにメリットがあるので、適切な住み分けができるのが理想
・そのためにはまずお客様に対して、提供する側がきちんとした説明責任を果たすことが大前提
・漆の正しい知識の提供と受け継がれてきた技術を守ることが、漆に関わる者の使命だと考えているため、漆を使わない直し方には正直興味がない


この先はざっくばらんに書くので、お時間がある方はよかったらご覧ください。


元々の金継ぎの場合は天然の素材を用いて直すため
万が一、金継ぎのカケラが口に入ってしまっても安心という点が、直す側としては一番大きいです。
合成樹脂塗料は成分明記なされていないものも中にはあるため、正体不明の素材をご依頼主様の口に入る可能性がある場所に使うのは怖くてできません。
(後述しますが、絶対に口に触れない置き物などを直すのにはいいのかなとも思います)

一度は壊れた器ですので強い衝撃が加わったりすれば、壊れていない器よりも壊れやすい点はあります。壊れる前のパフォーマンス100%だとしたら、直したことでパフォーマンスが120%に増加することが無いのと同じです。その点に関しては金継ぎ以外でも言えることかと。

直してでも使いたい器ということは、持ち主の方のその器に対しての思い出や思い入れがあり、
また大切にしたいという気持ちに他ならないからだと感じています。
わたしはご依頼主さまの「この子が大切」な気持ちが一番大事だと思っているので
直している最中に器から「大切にされてきた記憶」を感じることが多々あります。
あまり好きな言葉ではないですが、あえて言葉にするなら「愛情」が近いかもしれません。

わたしはモノを作る仕事をしているので、モノを大切にしてくださる方がもれなく大好きです。
だからこそ、大好きな方の健康に配慮して、安全性が担保されている素材を用いて直すのが私の信条です。

これだけ読むと簡易金継ぎは悪と捉えられてしまうかもしれませんが
個人的には『簡易金継ぎには簡易金継ぎの良さ』もあると思っています。

まず「かぶれない」というのは大きなメリットでしょう。
初心者の方が硬化前の天然の漆に触れると、程度の差はあれほぼ確実にかぶれます。
その点、合成樹脂塗料は漆ではない素材なので、かぶれる心配はありません。

また天然の漆の場合は硬化に湿度や温度が必須です(詳しいメカニズムは割愛します)。
つまり漆は作業時の気候に左右されるということ。
硬化させるためのお世話は常にしますが、それでも冬季は特に硬化に要する手間暇が通常時より2〜3倍かかることもあります。
ですが、合成樹脂塗料はそういった手間をかけずとも硬化してくれるのでその点は楽だと思います。

ただし成分が明文化されていない合成塗料を使って金継ぎするのは、
ここまで何度も書いた通り、わたくしでは安全性の担保ができないので、口に触れる部分の直しに使うのはお勧めしかねる…というのが正直なところです。
でも、いっそ割り切ってディスプレイや屋外で使うような小さい植木鉢を直すとかであれば
口に入れることはまず無いと思うので、許容できるかなと思います。
特に漆には唯一の弱点・紫外線がありますが、合成塗料であれば紫外線にも強いので良いかもしれません。

なので時間はないけど「とりあえず金継ぎの体験だけでもしてみたい」「費用を抑えて直したい」という方には、合っているのでは?と個人的に考えております。

懸念

ここまでわたくしの金継ぎおよび簡易金継ぎに対する考えを述べてまいりましたが、
昨今の金継ぎブームに対しては懸念も抱いております。

それは漆を使わない金継ぎにも関わらず、あたかも昔からある「本来の金継ぎ」であるかのような誤解を招く表現をしている場合が残念ながら存在するからです。

先述したとおりになりますが、私個人としては
『サービスを提供する側が両技法のメリット/デメリットをきちんと説明責任を果たした上で、お客様が納得して選ぶ』のであれば申し分はありません。
だってそれぞれの良さがありますし、その違いを踏まえての選択だから。

ただし「金継ぎ」と「簡易金継ぎ」が混同されて広まっていくことは伝統を守る観点から見ても賛同しかねます。

混同されることで起こることは
・説明がないと本当は漆を使っていないから安いのに、本物の漆を使って直している職人さんに対して『〇〇は安かったのに』とマイナスイメージがつく
・室町時代から続く金継ぎの歴史が文化が誤解されて広まり、金継ぎの正しい理解が得られなくなる
・何度も書きますがご依頼主さまは「漆を使った金継ぎ」と思っていて、実はそうではなかった場合
 知らずに口にして万が一健康被害が起こった際の責任は「漆を使った金継ぎ」が悪だと誤解される

などが考えられます。

それは結果的に双方の良さを殺し合い、遅かれ早かれ金継ぎ文化の衰退の要因になるでしょう。
そして私は「金さえ儲かればなんだって良い」という考えは正直虫唾が走るほど大嫌いです。

なので金継ぎを依頼したい/習いたい方は、今一度サービスを提供する側がどんな直し方をする方なのか確認して納得した上で依頼をして頂きたいというのが、私の切なる願いです。
このブログを読んだ方でもし大切な器を金継ぎをannonに依頼したいと考えてくださるならば、ご不明点などお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。誠心誠意お答えいたします。

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